「教育条理を破壊する人事評価制度の導入に強く抗議し、教職員の協力・協働による教育の営みを大切にした学校づくりをすすめます(見解)」

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2月10日、道高教組・道教組は人事評価制度に関する道教委交渉を行った。

私たちは、すでに導入されている他都府県の実態から、人事評価制度が教職員集団の分断・序列化と学校と教職員に対する管理統制強化をもたらし、子どもたちの成長発達を望む父母・国民の期待に背く重大な問題をはらんだものであると制度導入に反対の立場をとってきた。また、現在の「学校職員評価制度」、「査定昇給制度」時の交渉到達点を土台にし、全ての教職員を対象として行ったアンケート結果を道教委に示して、この制度がかかえる矛盾や圧倒的な教職員がこの制度に対して疑念を抱いていることを明らかにしてきた。現在の「学校職員評価制度」の目標が達成されているのかどうかには、道教委は「本制度が適切に運用されるよう努めてきた」と回答したが、アンケートでは、全体の76%が「目標が達成されているとは思わない」と答えている。査定昇給制度に至っては、その目標である「職員の士気向上・組織の活性化」に資することで「学校教育目標の達成を図る」という目標が達成されていると「思わない」が実に82%であった。さらに、現在の「学校職員評価制度」は4年の検討、1年間の試行がされたことから、評価「結果」が「任用・給与・分限」に「活用」される人事評価制度は、これまで以上に整合性や納得性、公平性の担保が求められるとして、評価者の研修や評価者から被評価者への説明を十分に行うために拙速に導入せず話し合いを継続することを求めてきた。

 

しかし、道教委は、地方公務員法「改正」を理由に現行の「学校職員評価制度」を「学校職員人事評価制度」として「見直し」、2016(平成28)年4月1日からの実施を強行した。最終交渉で勤勉手当への「活用」を提案にあった2016年12月から2017年6月と先送りさせたが、人事評価結果を「活用」する「任用・給与・分限」については、本日に至っても詳細が定まっておらず、検討中のものもある状態での施行となった。年度末反省や新年度準備、卒業式などに加え、緊張を強いられる入試がある時期にもかかわらず、4月1日施行ありきのスケジュールの押しつけは、教職員の不信感を募らせ、学校現場に大きな負担と混乱をもたらすものであり断じて認められない。

 

道教委は、実施を強行したが、交渉の中で以下の点について否定できなかった。

①   学校教育は、個々の児童生徒の心身の成長発達が図られるよう、校長を中心に教職員が協力し、組織的、継続的に行われることが大切である。

②   学校の教育目標は、校長の学校経営の理念のもとに教職員の意見が生かされることが大切であると考えており、学校や地域の実態を踏まえ、設定されるものと考える。

③   学校教育において校長と教職員との信頼関係は重要であり、この信頼関係を基盤として、教育活動をはじめとする学校運営は、教育目標の達成に向け校長を中心として教職員の協力のもとに、組織的に行われることが大切である。

④   学校教育において校長と教職員との信頼関係は重要であり、この信頼関係を基盤として、教職員一人ひとりがその役割を果たすとともに連携・共同して教育活動にあたることが必要と考える。

また、「人事評価は公正に行うことが不可欠」「性格、思想・信条など職務遂行に直接関係のない事柄は評価対象としない」「年齢、職種、学歴等の個人的な属性をもとに評価をおこなってはならない」「査定昇給制度の目標は継続、教職員給与の適正な水準を確保することは必要なこと」「自己目標設定の際には教職員個々の自主性・主体性を尊重し、評価者が一方的にそれを変更し、または、変更を強要することがあってはならないがどうかの問いには『共通理解を深め』」との回答を確認してきた。

 

そもそも教育における評価とは、教育という営みの本質に即したものでなくてはならず、その評価は、「評価者」と「被評価者」という固定的関係で行われるものではなく、管理職を含めた教職員・子ども・保護者・地域などそれぞれが双方的に対話的、応答的関係で行うものでなくてはならない。行き過ぎた「自己目標設定」への管理職の「指導助言」が長時間労働につながったり、ボーナスへの「査定」や「分限」への「活用」が足かせとなったり、行政や管理職いいなりの「物言わぬ教職員」となる可能性も否めない。実際に行われている他都府県では、「生徒の問題行動や保護者のトラブルを隠し深刻になってから表面化」「生徒に成果を求める」「校長が一人で目標を示し、職員に実行を求めることが多くなった」「校長が『平素から私に仕事のアピールをして下さい』と言った」などの問題が起こっている。

 

私たちは、人事評価制度の廃止を求め、「学校職員の資質能力の向上と学校活性化」「その成果が児童生徒に還元される」には、教育本来の営みの中に内包されている双方向の評価の実施が求められていることと、絶対評価を相対評価に押し込む「給与」への「活用」はこれまで同様すべての教職員の給与改善としなければならないことをこれからも訴えていく。そして道教委には、制度の見直しを図る観点で、今回の交渉で回答した「必要な検証・改善を行う」ことを求めていく。そのために、協力・協働の教育の営みを大切にし、教育全体に責任を持つ実践をすすめるとりくみに職場で全力をあげるものである。

 

以    上